ブーデュは自由人。何故ってそれは・・
ルノワールがブーデュ(ミシェル・シモン)を自由に動き回らせているのは、思わぬ贈り物を期待しているからです。 ルノワールは相手が俳優であれ登場人物であれ虐げることが嫌いです。 それにルノワールは、ブーデュの中に自分自身を見いだしており、他人の口を通して語られるその哲学につい聞き惚れてしまいます。ルノワールは「素晴らしき放浪者」を通じて、鮮明で汚れのないやり方で自分のかなりの部分を明らかにしました。
対極にある者たちの、それぞれの魅力
30年代のジャン・ルノワール監督のモノクロ作品。 あるきっかけで浮浪者がブルジョワの書店経営者に拾われ、 そこでひと波乱がおこる。社会通念にとらわれない浮浪者が、 ミシェル・シモンの演技でキュートに描かれている。 しかし、この映画の魅力はこの放浪者にとどまらない。 ブルジョワの書店主も、台詞回しが気が利いていて、魅力を感じずに入られない。 まったく対極にある者同士が、それぞれ対極にいながら魅力を放っている、 希少な作品である。 30年代のパリの風俗も楽しい。
アナーキーな人間と自然との交感
ルノワールが、人間と自然との交感に関心を寄せた自然主義時代の代表的作品。 主人公の浮浪者ブーデュは社会の制度や約束事から完全に自由な人物。映画史上で彼ほど、言葉の真の意味で「アナーキーな」人物(「究極の個人の自由を求める人間」)はいない。いい加減で気ままな人物。居候先の主人の妻や若い下女とアッケラカンと情を通じたりして、他人の家庭を混乱に陥れる。 人間社会の制約や規範から自由になろうとするアナーキーな人物は、最後には自然に向かう。後半では、ルノワールの好きな水と風(「ピクニック」)の描写が素晴らしい。ブーデュはこれらの自然の中でこそ、人間らしくのびのびとできる。 見る者も彼と共に社会の煩わしさから逃れて解放感を味わう。 制度にとらわれない人間を、そして水や風や緑との交感をこれほど感受性豊かに描いた作品はない。
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